「ハラール」って何?
ナマステ!ムンバイオフィスのミイです。
もう夏!?ってくらい暑いですね~。体調管理には気を付けたいところです。
先月末、休業中だったムンバイ酒場がインドカレー&ナン ムンバイ 町屋店としてリニューアルオープンしました!外観はあまり変わってないのですが、メニューや内装が新しくなりました。
内装は、「 汗と涙と煩悩のチベット・ネパール・インド絵日記 」の著者で絵描きの安樂瑛子さんによるイラスト。インドの名所がたくさん描かれている中、よく見るとムンバイにまつわる何かが…!?ぜひ町屋店でお確かめください!
さて今回は、「ハラール」やベジタリアンについて。言葉は知っていても、実際どんなものかわからないという方もいるのではないでしょうか。私もその一人。ということで、社長へのインタビューを中心にお送りします。
ムンバイで掲げている「ハラールフレンドリー」について、日本だとよくわからないという方もいると思うので詳しく教えていただきたいです。
ハラールというのは、宗教で言うとイスラム教に関することです。まずイスラム教の人たちは豚肉は絶対食べないんですね。でも豚肉以外の牛肉、鶏肉、羊の肉なんかは、お祈りをしながら食肉にする処理をしたものなら食べられる。そういうお肉しか食べてはいけない、というのがイスラム教の人たちの考えです。
インドにはヒンドゥー教やキリスト教などいろんな宗教の人がいるんですけど、イスラム教の人たちだけハラールを気にします。じゃあ豚肉のハラールはいいかっていうと、それは絶対にないです。
豚肉は絶対に食べないんですね。
はい、絶対にありえないです。お肉をどういうふうに処理したかっていうのがハラールなんだけども、イスラム教ではお酒も禁じられてるんですね。だから本当にハラールを守りたい人、100%守りたい人はお酒のことも気にします。
例えば醤油とか、アルコールが入っている調味料もダメっていうふうに考える人もいれば、そこまでは気にしないという人もいる。ただお肉だけはちゃんとお祈りしたハラールのお肉が食べたい、それだけは守りたいという人たちのために、私たちのお店ではハラールのお肉を使ってます。
だから完全にハラールじゃないんです。醤油を使ってるかもしれないし、例えばゼラチンとか動物性のものを使っているとか、お店にお酒自体置かないとか。そこまでこだわらないと本当のハラールにはなれない。
そう言うためにはもっと何段階も厳しくしないといけないんだけど、私たちは「ハラールフレンドリー(Halal Friendly)」なので、お肉はハラールだけど、それ以外は厳しくやってないですよっていうこと。
そういうことなんですね!
魚介類はいいんです。食肉にするような、処理することがないじゃないですか。カットするときにお祈りするってことなんだよね。
なるほど。今回、ハラールについて事前に調べてみたんですけど、日本のサイトだとハラールはイスラム教で許されているものだと書いてあって。例えば野菜とかスパイスなんかもハラールだと。
私はそれがすごく不思議。植物は自然なものだから、ある意味全部ハラールです。例えばトマトはハラールですね。
そもそもハラールじゃないトマトや野菜が存在しないってことですよね?
そうそう、そういうことなんです。
だからハラールかそうじゃないかを、わざわざ言わなくてもいいというか。
そうです。例えばスパイスの製造過程でアルコールを使っているとして、それも気にする人に、私たちはそこも気を付けてやっているいうのはハラールになるけど。
※インタビュー後に調べたところ、植物でも肥料などに豚の糞などを使っているとNGのようです。
ゴーゴームンバイのメニューには「アレルギー食材と一緒の環境で調理している」と書いてあったりするじゃないですか。そんな感じで、禁じられている食材と調理しないのとかも含まれるんですかね。
それはあるかもしれない。
例えば豚肉を扱ったところで…とか。
それは絶対だめですね。だから日本ではハラールについてあまりにも知識がないというか、極端になっちゃってるの。ハラール認定をとりたい人は、ハラールが何かわからないから日本にあるイスラム教の人のためのモスクに聞きに行くんですよ。
そのモスクにいるお坊さんたちは一番厳しい基準を言うわけです。それで日本の会社の人はそれを全部やらなきゃって思っちゃって、お肉はハラールだ、醤油はだめだ、ってなる。
でもそこまでしなくてもいいのよ。一般のイスラム教徒の人たちがとにかく気にするのはお肉のこと。お肉をどういうふうに処理したかっていう部分なので、それさえ守ればOKです。
なるほどわかりました。では、外国人にはベジタリアンの方も多いので、それについても伺いたいです。
はい。インドは80%以上がヒンドゥー教の人で、残りがイスラム教とか仏教などの他の宗教です。ヒンドゥー教徒には2種類いて、ベジタリアンとノンベジ。ヒンドゥー教の宗派で、ジャイナ教ってのもあります。
私の母はヒンドゥー教徒で、ベジタリアンなんですね。なので肉は一切食べない、魚も一切食べない。命あるものを殺したくないんです。命をとりたくないので、卵も食べない。
じゃあ例えばお味噌汁。味噌は大豆だから大丈夫かと思ったら、出汁。
あー、かつお出汁はダメなんですね。こんぶ出汁は大丈夫なんですか?
こんぶ出汁ならOKです。お魚の出汁はだめ、あとコンソメ使ってもだめ。心理的にだめなんですね。それがベジタリアンです。でもたまにベジタリアンなんだけど、卵は食べちゃうって人もいます。
ヒンドゥー教の場合はけっこう自分で決められるというか、自分と神様との間の約束なんですよ。
ふむふむ。
ノンベジなんだけど火曜日だけは肉を食べないですって人もいて、それは火曜日の神様、ハヌマーンのすごい信者だから、火曜日だけはベジタリアンになりますっていう。
月曜日は食べないって人もいるし、それはさっき言ったように自分と神様との約束。誓うというか、願をかけたりとか。若い人が、いい旦那さんと巡り合いたいから月曜日は肉を食べませんとかね。
ジャイナ教はさらにそれを厳しくしてて、虫とか細菌も殺しちゃいけないと思っている。歩くときもほうきを持って、掃いながら歩くの。アリを踏んじゃうかもしれないから。
へえ~!(驚)
マスクをする人もいます。しゃべってるときに口の中に入るかもしれないから。じゃがいもとか玉ねぎのような根菜も食べません。収穫するときに虫が死ぬかもしれないでしょ。
へええ~!(驚)
たまにムンバイにもジャイナ教の人が来ますけど、ジャイナ教の料理できますか?って言われたらどうするかというと、野菜は葉っぱものを使う。あとにんにくとか、刺激物も使わないです。だからかなり限られちゃうのね。
でもそういうのは、自分に勝つためのものだと私は思うんです。どれだけ我慢できるか、どれだけコントロールできるかっていうところから始まったんじゃないかなって。どれだけ断食できるかとか。食べ物に対してセルフコントロールできれば、他のことにも自分がコントロールできるようになるっていうかね。
なるほどなるほど。ベジタリアンの人でも乳製品を食べる人もいるとか?
あ、インドの場合はね、ベジタリアンでも乳製品はOKなんですよ。なぜかと言うと、牛から乳をありがたくいただくけど命はとらないので、そこは許されているんです。
なるほど!
だからヴィーガン(絶対菜食主義者)とはまた違うんですね。ヴィーガンはヒンドゥー教のベジタリアンとは違って、動物からは一切もらわない。お肉もだめ、お乳もだめ、はちみつもだめ。
はちみつもだめなんですか!?
ハチからもらっちゃだめっていうのね。だからヒンドゥー教とはまた違う考えよね。
私の知り合いも以前ヴィーガンになって、今は戻ったと思うんですけど、やっぱり大変そうな印象でしたね。外食だと食べるものがないというか。
そうよね。しかも日本人はとてもイノセントというかナイーブなのね。日本ってそういう制限ないじゃないですか。おいしければありがたくいただくという考えだから、豚肉食べちゃいけないとかないじゃない。体にいいもの栄養のあるものを食べましょうっていうさ、それはとてもいいんですけど。
今はグローバルな社会になって、いろんな人が日本にもいるとなると、じゃあイスラム教の人を招待して、どうぞおいしいものですって言って豚肉出したら…ね。
そうですね、だめですよね。
だからそこは、知識として持つべきですね。実はこの話がつい最近あって、私の親友でイスラム教の人がいるのね。だから彼女は豚肉は絶対食べないんです。先日あるところに招待されて彼女たちと行ったときに、たくさんごちそうを用意していただいてたんだけど、豚肉をふんだんに使ってあったの。
事前にわかってることだから、これまでは豚肉を使ってない料理とか、イスラム教の人だけは別の料理を用意していただけていたんだけど。私たちのグループをまとめる方が最近日本の方になって、知識がないのか、今回はそれが全くなかった。だから何も食べるものがなかったんです。
イスラム教の人がいて、その人が豚肉を食べないことを伝えておけばよかったんだけど、それがなかったから誰もハッピーじゃなかった。招待した側も何度も謝ってたし、せっかくたくさん用意したのに何も食べるものがないと言われて。言ってほしかったって。
そうですよね。
今回は宗教の話だけど、アレルギーと一緒なんですよ。例えば牛乳アレルギーだということを事前に伝えなかったら、命に関わる問題でしょ。それくらいシリアスな問題だと思ってほしいのね、もっと日本の方にも。
豚肉を食べない人に関しては、気持ち悪くて絶対に食べたくないんです。精神的にね。アレルギーは今厳しくなって、すごく気にするじゃないですか。だからそういうことも気にして、聞けばいいんですよ。
そうですね。
何かアレルギーありませんか?って聞くとかね。さっきのイスラム教徒の親友と食事に行くと、彼女は自分でわかってるから、絶対自分で「豚肉入ってませんよね?」って聞きます。そうすると入ってませんっていうの。それでサラダを頼んだら、持ってきたものにベーコンがのってるの。
(苦笑)ベーコンは豚なのに。
ね。豚肉じゃないですベーコンですって言うのよ。そういう子がいるわけ(笑)あとは、じゃあ外しましょうか?って言ったりするんだけど、それじゃダメなんですよ。一度ベーコンがついちゃってるから、嫌なんですよね。
また新たに、ベーコンのせないものを作らないとだめってことですよね。
そうなんです。日本の方はそういうのがないから、まだ意識が低いというか。だから「Do you have any allergies?」とか「Do you have any special dietary needs?」という聞き方をすると、「I have a peanut allergy.」とか「I can not eat beef.」とか返ってくると思います。
ヒンドゥー教の人は牛肉を食べない人が多いし。だからムンバイでは、牛肉も豚肉も出してないんです。
ヒンドゥー教は豚肉も食べられるんですか?
豚肉に関しては食べちゃダメとか言われないです。ただビーフは食べちゃだめ。
牛は神聖なものなんでしたっけ。
そうそう。イスラム教の人が豚を食べないのは、豚は汚いものだから食べたらダメという考え方。ヒンドゥー教は牛が神聖な、母なる牛なので尊敬の意味も込めて食べないんですよね。でも最近はインドの中でも国際化が進んで、ヒンドゥー教徒だけどビーフを食べる人が増えているし、私自身も日本が長いので豚肉も牛肉も食べます。
海外生活が長い人とか、親世代は厳しいけど、子ども世代でインターナショナルスクールに行ってたりしてると、なかなかね。けっこうオープンにはなってきてます。ただインドのマクドナルドのバーガーにはビーフが入ってないの。マトンが使われてたりね。
なるほどなるほど。じゃあ日本でも、東京オリンピックがあることですし…。
そうそう、そこは絶対に意識を持ったほうがいいです。アレルギーと同じくらい大切だと思えばいいんですよ。
ただの好き嫌いとかじゃないってことですよね。
はい。精神的なことなので、受け付けないんです。ムンバイはベジタリアンの方もジャイナ教の方も、イスラム教の方もどんな国籍の方も大歓迎でおもてなしできますので、ぜひいらしてほしいですね。
そうですね。お友だちでそういう方がいる方も大丈夫ですよね!今日は勉強になりました!
ふと、飲食店でのアルバイト時代に「これは豚肉と同じ油で揚げているか?」と尋ねてきた外国人のお客様がいたことを思い出しました。
私自身は食物アレルギーや食べられないものがないこともあり、他の人がどうかについて、正直あまり気にしたことがなかったです。なので今後は気を付けていきたいなと思いました。
特に飲食業に関わる人は、アレルギーはもちろん、ハラールやベジタリアンなどについて知っておくこと、食べられないものがないかどうか気にすることが大事なのではないかと思います。
ハラールは世界的に統一された基準がなく、どこまでこだわるかは人によって違うとのことなので柔軟に対応できればベターですよね。私もムンバイを通して、より知識を深めていきたいと思います!
ベジタリアン他、各国料理のご希望がある場合はお気軽にお問い合わせくださいませ!
では、また来月!
【次回は7月1日(月)更新予定です】